「この出来事から、私が得られることはなんだろうか?」
もし、この世界にRPGゲームのような魔法の呪文があるとしたら、まさにこの言葉なのではないだろうか。
ノリのいい友人の勧めで月額が6,500円するエグゼクティブな出会い系アプリに登録してみた。
アプリがエグゼクティブな食事処の予約までしてくれる。
18:00に渋谷で仕事を切り上げ、銀座線で16分。
三越の「4丁目で愛ましょう」の広告から京橋方面に二つ目の信号を左に曲がった華やかなジュエリーショップのビルの7階にある、これまたエグゼクティブなイタリアンレストランに20:15に待ち合わせで予約をしている。
18:47
「こちらこそ~☆(^^)!!」と、相手からのメッセージ。
20:09
「20:15に予約していたタカハシです」
エグゼクティブな雰囲気のお店。
「お待ちしておりました。こちらにどうぞ」
相手はまだ着いていない。
20:25
相手はもしかしたら、致命的な方向音痴で、難解な数式を目の前にしたように地図が読めなくて、「遅れます!」のメッセージを送ることすら忘れてしまうほど戸惑っているのかもしれない。
20:35
エグゼクティブな雰囲気にふさわしい、毎月一回は社内で「ワインの注ぎ方」に関する研修が行われているであろう、長い年月をかけて培ったような “姿勢の正しい” ウェイターが、そのお店にふさわしくないものを見るような目で、チラチラとこちらを伺っている “気がして” ならない。
20:46
ひとりで席に座っている僕がいた。
約束の時間から31分が過ぎた。
通り過ぎた蒼井優に似ているウェイトレスに
「もうひとりの人が来れなくなったので……」
と言うと、彼女が申し訳なさそうな笑顔をつくってくれて
「そうでしたか。キャンセル料は結構ですので……」
と、返してくれた。
山ちゃん似のウェイターだったら僕は帰っていたかもしれないが、僕は、おすすめのチーズ盛り合わせと、それにあう白ワインをオーダーすることにした。
まず、僕は思う。
時間とお金のことは100歩譲ったとしても、ワクワクと緊張、そして入店から37分間のエグゼクティブなお店から感じた恥ずかしさを返してほしい。
そして、なにより、アプリでの出会いとはいえ、連絡なく平気でそういうことをする人がいる。ということに、ある種の失望と諦めに似たものを感じた。
やるせないという言葉はこのためにあるのだろうな。
どこに向ければいいのか分からないこの気持ちを、チーズ盛り合わせの前菜として味わっていた。
・
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と、突然! 心の中で、あの音が聴こえてきた。
「テレレレッテッテッテー♫」
タカハシレオナの、Lvがあがり、
新しい呪文「インサイドアウト」を覚えた。
【この出来事から、私が得られることはなんだろうか?】
『矢印を内側に向けない限り、成長はない』
「インサイドアウト…」
ウェイトレスの蒼井優と目があった。
「私は、あなたの考え方を支持するわ」
と、今度の彼女は勇気づけるような微笑みで、うなずいてくれる。
長い年月をかけて培った姿勢の正しいウェイターが “その正しさ” を分け与えてくれるように、空いたグラスに水を注ぎに来てくれる。
【この出来事から、私が得られることはなんだろうか?】
問題の原因を、外側ではなく、常に「自分自身が源」として考えること。
この世の中は、ある意味では、理不尽なことで溢れている。
約束は守られず、期待は裏切られる。どこにもぶつけることのできない感情は行き場を失い、静かに窒息死する。
「仕方がない」と言ってしまえば、それ以上でもそれ以下でもない。
けれど、たぶんね、”正しい生き方” をしているであろう人は
(仮に自分に一切の非がなかったとしても)
「相手のせいだ!」と被害者になるのではなく、
「この出来事から、私が得られることはなんだろうか?」
と、常に主体的に、矢印が自分に向いているように思う。
出来事と、それに対する反応の間には、本来、隙間があるはずなのだ。
その隙間をちゃんとよく見ると、長時間熟成したチーズのような、人生における本質的な ”旨味” がきっと詰まっている。
少し高度に思えるかもしれないが、損することの原因を与えてくれた相手に感謝をしてみる。
すると、物事の見方は、180度変わる。
このインパクトはめちゃくちゃ凄い!!
この記事が出来上がったことは、間違いなく約束を破って下さった彼女のお陰である。
私が得られることのきっかけを与えてくれた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
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